Spring Waltz#1-2/3
2007年 04月 09日
つづきより
翌日、フィリップはイナを迎えに行きます。そして、二人は車でザルツブルグへと向かいます。
ウニョンはウィーンの駅のホームで男性とぶつかります。
「ちょっと、なによ、あの人。誤りもしないで。」
列車のコンパートメント(列車などの仕切った部屋)に行くと、すでに4~5人の人がいて、ウニョンのトランクを窓側の上の荷物棚にのせてくれました。
フィリップはイナを送りながら二人で会話をします。
フィリップは15才の時にチェハと出会って、その頃はフィリップはピアノをひいていました。そして、ピアノはかなわないのでチェハと友達になりました。
イナはチェハに15年ぶりに会ったことで、私のことを忘れたと残念がります。
列車はリンス駅で止まり、同じ部屋の人たちが降りていってしまいました。
残ったのはウニョンと駅でぶつかった男性だけです。窓をボールペンで「タタンタ、タン、タン」と叩き、「Are You Korean?」、「こんにちは?」、「ニー ハオ マ?」と韓国語、日本語、中国語で訊ねますが、無視されます。
「韓国人なら、こんなに失礼なはずないのに。顔はまあまあなのに。」と独り言をつぶやき、ふくれっつらくをします。向かい側に座って楽譜を読んでいた男性が、少しだけ目を上げます。
列車は雪景色の中を走り、いつの間にかウニョンは寝てしまいます。
ウニョンがふと目を覚ますと、その男性は寝ているのですが、その頬に赤い血のようなものが垂れていて驚きます。
「血なの?」と驚きますが、上を見ると、荷物棚にのせた自分のトランクからコチジャンが垂れて、男性の白いコートや、白いセーターを真っ赤に染めています。「あ~、どうしよう。」
そっと手を伸ばし、男性の頬に触れようとして自分の手にもコチジャンが垂れます。そして、椅子に足をかけて高いところにある荷物をとろうとして男性の膝元に倒れこみます。
男性は目を覚まし、目の前に迫るウニョンの困りきった顔を見つめます。自分の顔や肩に垂れたコチジャンの赤い色に驚き、不快な気持で怒ります。
「なんだよ、これ。いいよ。」
「ごめんなさい。」
「どいて。」
と、韓国語で返します。
何とかしようとするウニョンの手を振り払って洗面所に行ってしまいます。
顔を洗って戻った男性はため息をつきます。ウニョンは思い出したように自分のトランクから赤いセーターを出して、これを着てくれるように頼みます。
「着るわけないだろう。子供じゃあるまいし。」
しかし、いつの間にか男性は熊の絵の入った赤いセーターを着ています。ちょっと袖が短くて、窮屈そうですが、黙って楽譜を読んでいます。
「広場で演奏とかしてる人?」
ウニョンは悪いと思って、クリーニング代替わりにコンサートのチケットを無理矢理渡します。
「プロの演奏を見たら勉強になるでしょう。」
「なんて名前?」
「クリス。」
「じゃあ、私はアリス。不思議の国のアリス。よろしくね、クリス。」
二人で同じ部屋にいるので気まずいのか、窓ガラスに息を吹きかけて落書きをするウニョンですが、その様子をちらりと見た男性は、幼い頃にニコニコマークを二人で付け合ったのを思い出しました。
そして、ウニョンの顔をしげしげと見ます。
「何?」
「いや、ある人に似ているから。」
変な顔をしてウニョンは少し考え込みました。そして、男性は遠くの景色を見ながら何かを考えているようです。
ザルツブルグの駅に着き、ウニョンは男性に話しかけ、コンサート会場へ一緒に行こうと誘います。しかし、男性はさっさと立ち去ってしまいますから、「嫌な奴。迷子になっても知らないから。」とつぶやきます。ウニョンの方が大丈夫なのかな。
つづく
翌日、フィリップはイナを迎えに行きます。そして、二人は車でザルツブルグへと向かいます。
ウニョンはウィーンの駅のホームで男性とぶつかります。
「ちょっと、なによ、あの人。誤りもしないで。」
列車のコンパートメント(列車などの仕切った部屋)に行くと、すでに4~5人の人がいて、ウニョンのトランクを窓側の上の荷物棚にのせてくれました。
フィリップはイナを送りながら二人で会話をします。
フィリップは15才の時にチェハと出会って、その頃はフィリップはピアノをひいていました。そして、ピアノはかなわないのでチェハと友達になりました。
イナはチェハに15年ぶりに会ったことで、私のことを忘れたと残念がります。
列車はリンス駅で止まり、同じ部屋の人たちが降りていってしまいました。
残ったのはウニョンと駅でぶつかった男性だけです。窓をボールペンで「タタンタ、タン、タン」と叩き、「Are You Korean?」、「こんにちは?」、「ニー ハオ マ?」と韓国語、日本語、中国語で訊ねますが、無視されます。
「韓国人なら、こんなに失礼なはずないのに。顔はまあまあなのに。」と独り言をつぶやき、ふくれっつらくをします。向かい側に座って楽譜を読んでいた男性が、少しだけ目を上げます。
列車は雪景色の中を走り、いつの間にかウニョンは寝てしまいます。
ウニョンがふと目を覚ますと、その男性は寝ているのですが、その頬に赤い血のようなものが垂れていて驚きます。
「血なの?」と驚きますが、上を見ると、荷物棚にのせた自分のトランクからコチジャンが垂れて、男性の白いコートや、白いセーターを真っ赤に染めています。「あ~、どうしよう。」
そっと手を伸ばし、男性の頬に触れようとして自分の手にもコチジャンが垂れます。そして、椅子に足をかけて高いところにある荷物をとろうとして男性の膝元に倒れこみます。
男性は目を覚まし、目の前に迫るウニョンの困りきった顔を見つめます。自分の顔や肩に垂れたコチジャンの赤い色に驚き、不快な気持で怒ります。
「なんだよ、これ。いいよ。」
「ごめんなさい。」
「どいて。」
と、韓国語で返します。
何とかしようとするウニョンの手を振り払って洗面所に行ってしまいます。
顔を洗って戻った男性はため息をつきます。ウニョンは思い出したように自分のトランクから赤いセーターを出して、これを着てくれるように頼みます。
「着るわけないだろう。子供じゃあるまいし。」
しかし、いつの間にか男性は熊の絵の入った赤いセーターを着ています。ちょっと袖が短くて、窮屈そうですが、黙って楽譜を読んでいます。
「広場で演奏とかしてる人?」
ウニョンは悪いと思って、クリーニング代替わりにコンサートのチケットを無理矢理渡します。
「プロの演奏を見たら勉強になるでしょう。」
「なんて名前?」
「クリス。」
「じゃあ、私はアリス。不思議の国のアリス。よろしくね、クリス。」
二人で同じ部屋にいるので気まずいのか、窓ガラスに息を吹きかけて落書きをするウニョンですが、その様子をちらりと見た男性は、幼い頃にニコニコマークを二人で付け合ったのを思い出しました。
そして、ウニョンの顔をしげしげと見ます。
「何?」
「いや、ある人に似ているから。」
変な顔をしてウニョンは少し考え込みました。そして、男性は遠くの景色を見ながら何かを考えているようです。
ザルツブルグの駅に着き、ウニョンは男性に話しかけ、コンサート会場へ一緒に行こうと誘います。しかし、男性はさっさと立ち去ってしまいますから、「嫌な奴。迷子になっても知らないから。」とつぶやきます。ウニョンの方が大丈夫なのかな。
つづく
by arrive_at
| 2007-04-09 19:26
| 春のワルツ 2007