Spring Waltz#10-2/4

つづきより


 CDショップで買い物をする二人、チェハは先を歩き、ウニョンはマネージャーとしてついて行きます。

 ピアノ演奏のあるバーで、チェハは演奏家の友達二人と会います。

 (一人は復活に出ていた若手刑事さんではないですか。)


 「ウィーンでのチェハさんとフィリップさんは、

  ショパンとルヴィンシュタインに例えられていたんですよ。」

 「えっ、アインシュタイン?」

 「彼女はロードマネージャーなんだ。」

 「ロードマネージャー?

  お前も出世したなあ。

  ロードマネージャーまでいるのか。」

 「恋人かと思いました。」

 「まさか、違います。」


 同席したウニョンは音楽家の名前もわからず、はじめて聞いた言葉を繰り返し覚えようとします。チェハはちぐはぐな会話の中で、ウニョンに何かいいたそうです。


 「僕のロードマネージャーなんだから、音楽の基礎知識ぐらいは持っていて欲しいなあ。」

 「基礎知識って、仕事に必要ですか?」

 「アルトゥール・ルヴィンシュタインって言うのはね、

  ロマン派の神童と謳われた天才ピアニストだったんだ。」

 「誰もそんなこと聞いていないのに。」

 「ただ、テクニックはすごいけど遊び心がありすぎて、若い頃は評論家受けしなかった。」

 「アルトゥール・ルヴィンシュタイン、アルトゥール・ルヴィンシュタイン…」


 一生懸命覚えようとしているウニョンを、チェハ優しい目で見守っています。


 「持つよ。」

 「いえ、私が持ちます。」


 凍える手を息で温めているウニョンに、チェハはウニョンの荷物を持つために手を差し出し、そして二人の手が触れたときに手を握り締めました。ウニョンは少しためらっています。


 「こうして行こうよ、これからは。

  意地張らないでさ。」


 小さくうなずくウニョンでした。



 うちに帰ってからは、ウニョンは嫌な奴のことをたくさん話しています。


 「アルトゥール・ルヴィンシュタインの話とか、エミール・ギレリスとか、ブレルデンかブレンデル。こんなややこしい名前、よく覚えるよね。頭いいんだな、嫌な奴って。」


 そのひとり言を聞いていたミジョンは呆れます。


 「さっきから嫌な奴の話ばかりしてる。

  ったく、もう、無意識に話していたわけね。

  あんたこそ、そのややこしい名前、いつ覚えたの?」

 「でもさ、嫌い嫌いも好きのうち。あんた、その人にぞっこんラブじゃない。」

 「そうかな。動揺しているとこが怪しい。出身もソウルだなんて見栄張るし。

  どう、白状しな。好きなんでしょ。」


 友達の目はたいへん厳しいものですね。


 チェハは、夜遅くピアノを弾いて作曲をしています。今日は乗っているのでしょうか。


 
 小川のせせらぎの聞こえる河原で、チェハとフィリップとイナは音源を聞いてチェックしています。


 ウニョンは少し離れた橋の欄干に腰掛けて、小川のせせらぎに耳を済ませています。そこに、チェハがやってきました。


 「何してるの?」

 「座ってるだけ。」

 「そうやってても、可愛くないよ。」

 「かわい子ぶっているわけじゃありません。

  変なこと言わないで。」

 「顔が可愛くなくて、性格が悪くて、口だけは達者で、態度のでかい奴。

  どう思う?」

 「うわっ、最悪ですね。それ。

  だって、顔がダメなら性格が良くなきゃ。

  それに、口が立つなら感じは良くないと。

  そんな人ダメですよ。」

 「じゃ、どうしたらいい?その人が好きなんだ。」


 ちょっとウニョンは考え込みます。チェハはいたずらっぽくウニョンを見ます。


 「あの、私に恋の相談ですか?」

 「恋を知っているのかなと思って。」


 ウニョンとフィリップのことを暗に指しているのでしょうか。はたまた、それは例え話をしながらウニョンに思いを告げているのでしょうか。二人は黙り込んでしまいました。ドキドキですね。


 そこにイナが現れて、ウニョンにコーヒーをみんなに出すように行って追い払ってしまいます。しかし、立ち去るウニョンの後姿を目で追うチェハでした。


 河原から蝋梅の花が咲く中を一行は歩いていきます。河原を横切る時にチェハが手を差し伸べ、ウニョンは手を取ってもらいます。その横には手を出し遅れたフィリップがいますが、ウニョンは全然気付きません。イナもなんだか不機嫌なようです。


 ミョンフンはウニョンの親の店の前で、車の窓から様子をうかがいます。


 夜になって、ウニョンに電話が鳴ります。それはチェハの作曲したピアノの演奏です。

 チェハはピアノの上に携帯電話を置いて、ウニョンのために演奏をしています。こころの中はウニョンで一杯なんでしょうね。


 翌朝はウニョンはどんな服にしようかと、懸命に服選びをしています。そして、車をホテルに回して、サイドミラーで髪形を治したりして嬉しそうです。

 チェハはウニョンの車に荷物を積み込みますが、そこにやってきたイナに同乗するように誘われますが、断ります。

 ウニョンは気にしますが、チェハ気にしないように言います。後ろの席に座っていたチェハは、運転席の後ろに移動して、シートに体を近づけます。驚くウニョンですが、チェハは結構楽しんでいます。これって、かなり変態です。でも、スクーターに乗ったときのことを思い出して、二人は笑っています。若いって無邪気です。


 教会に到着すると、チェハは今朝イナの車で行くのを断ったことを誤ります。「イナ、先に謝っとくね。ごめん。残酷なことを言うようだけど、僕ら、友達でいよう。」

 (よく言ったと溜飲を下げる諸兄の方々も多いことでしょう。個人的に私にもこんな友達がいました。金持ちの子供というのを鼻にかけ、プライドが高く、人への配慮の出来ないおばかさんです。大人になるともっとたちが悪くなり、人に拒絶させると取り乱していました。お疲れ様な人生です。バイバイ!)


 「はっきりさせておかないと、悪いから。」

 「聞かなかったことにする。先ずは仕事よ。

  話しは後にして。」


 チェハは困っています。


 ピアノの前で、チェハとフィリップは演奏の準備をしています。一緒に弾かないかと言うチェハに、緊張すると言いながらも手もみなどをして、笑ってフィリップは弾くことにしました。昔からピアノ演奏を介して仲が良かったのでしょうね。

 この場合、フィリップが例のルヴィンシュタインではないかとも思ってしまいます。遊び心は十分ですから。

 チェハとフィリップは裏山を登りながら、いろいろと話をします。滑り落ちたチェハに、怪我をした手にフィリップはTシャツを切り裂いて手当てします。


 チェハの録音中にフィリップがウニョンに話しかけているところを見つけて、突然、チェハの手が止まります。少し動揺しているのでしょうか。または、軽く嫉妬でしょうか。分からないけど…。


 教会での録音中に、キーキーという音がします。ディレクターが気が付きますが。


 早朝になり、まだ暗い中、ペンションのテラスでウニョンにチェハは訊ねます。演歌が好きだったというウニョンに演歌ってどんな曲かを聴きます。チェハは聞いたことがないのですが、ウニョンは調子こいて歌っています。明るい性格です。

 楽しそうに河原で散歩をしているところに、フィリップもやってきます。二人の仲に割り込んだ感じですが、フィリップにはそんな二人の雰囲気に気が付きません。チェハ、どうしましょう。


 録音の前に例のノイズを止めないといけないということで、みんなで探します。ウニョンが見上げたところには、立て付けの悪いステンドグラスの窓が今にもはずれそうです。フィリップがウニョンをかばってステンドグラスはフィリップの頭の上に落ちました。

 フィリップは怪我をしてしまいます。



つづく




 









 
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by arrive_at | 2007-06-23 18:01 | 春のワルツ 2007  

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